▼長谷部岳翁の獅子頭2018/04/25 14:54 (C) 獅子宿燻亭7
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1986年(昭和61年)3月の記名札のある長谷部岳翁(がくおう)の作の獅子頭が入荷した。
かなり以前、十日町笹川テント店さん宅で長谷部岳翁の獅子頭を二頭拝見した。
長井出身の長谷部氏については詳細不明で山形市に移ってからも獅子頭を制作されていた
という事だけだで白鷹町萩野小学校の小獅子を修理した時、長谷部氏の記名を見つけている。
彼の獅子頭の作風はいかめしい顔付で、タテガミが豊かに付けられて黒獅子よりも赤い獅子頭を
得意とする彫師である。
縁あって高さ12cm巾14cm奥行き17cm程の小さい獅子頭を入手できた。小品にもかかわらず
木材を合わせて制作している。
眉間には宝石風のガラスが取り付けられ脳天には宝珠も付き、上下に牙が犬歯と奥歯にある。
ガラスケースから出して眺めていると、制作を始める為に持って来ている川西町大塚熊野神社の
獅子頭が視野に入った。あれっ?と強く感じる物があり二頭を並べてみた。
特に鼻の造り、目尻が上がった目、眉毛の造りや巻き毛等酷似しているではないか・・。
長井以南で長谷部岳翁氏の作の存在は稀で聞いた事が無かった。大塚熊野神社の古参総代たちの
話でも獅子頭の作者は不明で記名も見つからなかった。
飯豊町中津川の名人 渡部 亨氏かと思っていたが、作風に疑問があった。
しかし、神社にはこの獅子頭の他に同じ表情の、もう一頭獅子頭がある。
眉毛の直ぐ上に眉毛がある・・とは変な表現だが、タテガミのヤクの毛が一列植えてある。
タテガミが少なくなっているので、失礼だが禿オヤジ風に見えてしまう獅子頭なのだ。
長谷部氏の作は、皆、我の強くアクのあるオジサンの顔付の作風といっていい。
大塚熊野神社の獅子頭の作者は長谷部氏である事は直感的で、これから二頭をさらに見比べてみよ
う。大塚熊野の獅子の塗りは「梨地塗り」という特殊な塗りで細工され、この辺では少なく、
高畠町の深沼地区の八坂神社の大獅子にこの梨地塗りが施されている。
以前もブログに書いたが、大塚熊野神社の拝殿の写真に「昭和52年(1977年)舞獅子に改む 獅子
・笛・太鼓若連一同」とあり西大塚八幡神社から長井の総宮系の舞を習ったとある。それ以前は獅子
舞の形で無く「やー獅子」と呼ばれる獅子回しの形だった。そして昭和60年に獅子頭を新調したと
いう記念写真が残っている。この時に長谷部岳翁氏がどちらかの獅子頭を制作したのかも知れないし
両方作ったのかも知れないが、それについて詳細は無い。
ただ今回、入手した獅子頭の制作年代は昭和61年と熊野神社が獅子頭を制作した年と重なる。
この獅子頭のタイプは川西町高山の八所神社にもある。しかし下手に塗り替えられて残念な状態だ。
後ろから内部を見ると、かなり古い感じがする。大量の頬毛も共通している。
推測だが、大塚熊野と八所神社の古い獅子頭は西大塚の金子熊太郎の残した獅子頭では無いだろう
か? 梨地塗りを考えるような彫師はその道に、余程精通した職人でないと選択しない技法だから
だ・・・。謎は深まりばかりで解決しない。