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▼ヤマガタ蔵プロジェクトのゆくえ その2

蔵オビハチとの出会い

司会
 最初、カフェ空間として蔵を提供してくださったのは、オビハチという屋号を持つ小嶋商事の小嶋正八郎さんでした。メインストリートから一本入った道路に位置していますね。なぜこの蔵に着目したのでしょう。

山畑
 もともと屋敷の裏手にひっそり建っていた荷蔵なんですが、道路整備によって敷地が分断され、蔵が道路に面することになった。小嶋さんご自身、この機会に蔵を何とか利用できないかと思案していたという背景がありました。小嶋さんは屋根を修繕し、上下水道のインフラを整えて、道路に面する部分に漆喰を塗って、その先の学生たちができるところは何でも造作していいよといってくださったんです。

 僕らがまず取りかかったのは大掃除。 初日は市民グループ 「まちづくラー」 が率先して手伝ってくれた。 次にカフェとして必要な厨房を作ったり、 トイレにペンキを塗ったりという作業に取りかかりました。トイレの施工や什器の製作は山形県長井市にある山形工科短期大学の学生が担当してくれました。実際に図面を書いてものを作るという経験のない学生が取り組んだので、それ自体も面白かったようです。 ただ、図面が読めない学生もたくさんいたから大変だった。

竹内
 学生の設計図をもとに椅子を作ってみると、できあがったのはとてもじゃないが座れない(笑)。お金がないから自分たちで手を掛けるしかなくて、トライアンドエラーをくり返したんですよ。一つ一つ丁寧にやるしかないので、余計なことまで手が回らない。余計なことができない状況が功を奏したんです。いい雰囲気のカフェができたのは、そのおかげですよ。

山畑
 学生たちは最後の方は相当疲労困憊していたけれど、三週間の営業で什器の材料費くらいは賄える収益がありました。身びいきではなく、芸工大の学生ってすごいなあと感じ入りましたね。 一人の学生がそれぞれネットワークを持っているんですよ。 陶芸を専攻する友人がコーヒーカップを作り、 彫刻を学ぶ学生は鉄製の照明器具を作った。グラフィックデザインを学ぶ学生はロゴマークや暖簾を作ってくれた。建築専攻の学生とは違う視点からカフェづくりにどんどん参加してくれたんです。大人との繋がりもあったので、プロとして活躍しているミュージシャンを呼んでジャズライブをしたり。学園祭とは違う、普通に町中の「みんなの行きたい場所」になっていましたよね。


[「ヤマガタ蔵プロジェクト」ポスター]

竹内
学生は学生なりに、蔵主さんは蔵主さんなりに「何かができる」という実感を得たんです。小嶋さんはこの試みの後、さらに蔵に手を加えて 「蔵オビハチ(灯蔵)」として営業を始めました。音楽ライブやアートの展覧会もするなど、持続した空間として自立しています。

・・・その3へつづく
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