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▼ヤマガタ蔵プロジェクトのゆくえ その3

蔵ツアーの魅力

司会
 その後はどんな展開をしてきたのでしょう。

山畑
 最初の試みが成功したことで、「うちの蔵も活用していきたい」「どうしたらいいんだろう」 という相談が舞い込むようになりました。 そこで、2004年は市内に点在する5つの蔵に呼びかけてイベント「蔵ネット」を仕掛けました。


[蔵ネットでの左官体験。初めての壁塗りを体験]

 蔵プロとして面的な展開をすれば相乗効果が出るのではないかという考えからです。 オビハチさんではドキュメンタリー映画の上映、香味庵まるはちさんでは小学生対象のワークショップ、ギャラリー卿自楽さんでは木地玩具のイベント、のむらやさんでは落語会、文庸蔵さんでは本の展示、そして山銀本店さんでは古道具ポスター展……。市内の蔵マップも作って配布しました。ただ、メインの5軒は地理的にちょっと離れていたので、思惑どおりの賑わいにはならなかった。それから、立地条件や蔵主さんの意向があるから、必ずしも蔵オビハチのような展開ができるとは限らないとわかりました。
 一方、一般の参加者を募って蔵を見学する「蔵ツアー」を始めました。蔵ツアーは毎回盛況です。なんといっても、よそのお宅の蔵の中を覗けるのがいい (笑)。 普段はよほど親しい近所の人だって蔵の中なんて見せてもらえませんからね。

竹内
 わくわくして面白いよね。

司会
 最近の活動はいかがですか。

山畑
 今年2006年6月には、太田三郎さんという切手を素材とするアーティストを呼んで「おのや」さんでアーティスト・イン・レジデンスを展開しました。 一週間にわたって蔵を制作場所とし、 蔵をテーマに作品を制作していただきました。 また、 趣味で絵を描いていて、 蔵を増築してちゃんとしたギャラリーにしたいという蔵主さんがいて、 まさに今それを形にするギャラリープロジェクトが進行中です。

竹内
 蔵プロとは別に進んでいた話なんですが、相談を持ち掛けられたことから、学生がどんどん提案していったんです。私たちが思っている以上に学生たちと蔵主さんは仲がいいですよ。大学のキャンパスでは触れ合えないような方たちと親しく話ができたり、一緒に考えながら活動できている。 当初より地味ではあるけれど、人的なつながりという点では大きなうねりが生まれている。蔵プロでの接触がきっかけとなって、町では確実に何かが始まろうとしているんです。

山畑
 ただし、一番怖いのは学生の甘えです。大人の社会から見たら許されないことをやってしまった場合、「君らのやっていることは間違っているぞ」 ときちんと叱ってくださる方もいますが、 全員にそんな優しさを期待してはいけません。 そのあたり、 学生たちはきちんと心してかからないと。

司会
 学生たちは次々と卒業していきますが、蔵プロはうまく続いています。 理念がきちんと継承されているんですね。

山畑
 学生たちは放っておいても勝手に動いて、毎年独自の試みに挑戦しています。 不思議なことにちゃんとリーダーが登場して自然に世代交代しているんですよ。 ただ、フリーペーパーやウェブでの情報発信、それから人気のある蔵ツアーなど、誰もがわかる蔵プロの柱となる活動は続けていくべきですよね。そのうえで、今年の学生たちがめざすのはこれです、 と打ち出していくといい。

司会
 毎年、 蔵が一つ一つ自立していく姿がイメージできますが。

山畑
 いや、そこは頭の痛いところです。なぜなら、蔵が自立していく速度より、蔵がなくなっていく速度のほうがずっと速いんですよ。もっと何とかできないかという思いは常にありますね。

竹内
 私たちは必ずしも山形全部の蔵を蔵プロに巻き込もうとは思っていません。 蔵を使った飲食店でも洋服屋さんでも、 いろんな形態の営業があっていい。 オーナーさんが蔵に価値を見出して、 使うことによって保存ができて、 なおかつ地域の人に親しまれながら営業していける蔵がたくさんあれば、 街全体にとって非常に好ましいと思っています。

・・・その4へつづく
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